リノベーションなしでの空室改善手法の1つに『ヒトとの関わりを見直す』という意味での管理会社の精査があります。他にもたくさんありますが、一つの例として参考にしてください。他の事例はおいおいブログにて掲載していきます。

1 管理会社の選定

管理といってもいくつものパターンがあります。『サブリース型管理(一括借り上げ)』『全部管理委託』『一部管理委託』『仲介のみ専任契約』『自主管理』など様々です。どれが良くてどれが悪いというわけではありません。ご自身の管理スタンスに応じてお任せされれば良いでしょう。

例えば、ご自身は昼間お仕事をされていて、賃貸管理に時間を取っている暇がない方などは、管理を依頼された方が良いですし、ご自身で管理をするのが生きがいの方であれば、自主管理でも良いと思います。最近は、自主管理の家主さんでも、私たち不動産事業者よりもプロフェッショナルな方もいらっしゃいますね。

しかし、空室が問題となっている物件の場合は、何かしら問題があることが多いです。管理料を負担しても、それ以上の見返りがあればよいのですが、そこまでやってもらっているのか?という疑問が出ることが多いです。

例えば、家主さんが管理会社に管理を任せることによって十分な時間が生まれ、もっと意味のある事業に打ち込めるとか、支払った管理料以上に家賃などの収入が増えるケースなどです。あるいは、運営費が減るというのも一つの見返りでしょう。

では、管理会社全ての管理がそのような見返りがあるかというと、そうではありません。なので、いくつかの管理状態についてのチェックをし、現状はどのような管理状態で、今後はこのように管理することが必要になるという方向性を描き、それが現状の管理会社で実現可能かどうかということを検証することが必要になるのです。では、皆さんがどのような判断軸で管理会社を選定しているかをもう少し掘り下げてみてみましょう。

A 『家主さんの代わりに管理業務を行う管理会社』VS『収益改善を提案する管理会社』

私が管理会社に入社したのは、平成14年の10月でした。その当時は、家主さんがする必要がある業務とか作業を代わりに行う管理業務代行の管理会社さんが主流でした。私が入社する前20年間ほどもそのような状態であったと認識しています。その時は、京都の管理会社に勤務していましたので、それはそれは貸し手市場バチバチでした。(笑)

どういうことかと言いますと、学生マンションでは、1年契約で更新料が毎年15万円~18万円取得できたり、礼金も20万円~取得できたりしたわけです。それだけ、初期費用で取得でき、また、当時は原状回復費用が入居者さん負担でしたので、今のように家主さんが負担することも稀でした。ですから、入居率を高く維持したり、家賃の値下がりを抑えるのに、それほどの努力が必要ではありませんでした。家主さんも家賃の5%という管理料はそんなに大きい負担ではなかったように思えます。しかし、今は単に管理代行をするだけで5%は少し負担が大きいように感じますね。

一方、収益改善を提案する管理会社は、家主さんの賃貸経営での収益を改善することを目的としています。家主さんのするべき管理業務を代行することはもちろんなのですが、会社として家主さんのアパートやマンションを管理させていただく目的を収益の改善にしています。

収益の改善とは、収益を増やすということだけではありません。家賃の減少幅を少なくする、あるいは、遅くさせることにより、家主さんのキャッシュフローを確保します。また、収益というのは、収入から費用を差し引いたものですから、収入を増やすということだけではなく、支出を減少させることも一つの方法となります。また、あえて費用を掛けて収入を増やすことが出来るのであれば、もちろん検討の一つになります。

今のリノベ提案は、リノベ後の部屋ありきで、実際に家賃がどれだけ取れるのか?他の方法も検討した上でリノベが最適なのか?という疑問が残ります。中には、自社の利益のために、リノベ提案ありきの家主さん向け営業を掛けたりする会社さんもあります。

物売りちゃうねん!!

ということでしょうか。パッケージでリノベありきの提案をする業者さんが増えてきていますが、くれぐれもご注意いただきたいところです。

特に、『近隣でリノベした結果1万〇〇円家賃UPに成功した』というのも、元の家賃設定がどうだったのか?というところも含めて慎重に検討すべきでしょう。数字というのは、客観的に見ればモノサシとして機能しますが、主観が入ると何とでもなりますからね。

ついでにお話ししますと、投資分析なんてのも、『データで客観的に』という業者さんの中には、主観を入れて数字を捏ねくりまわしたりしているところもありますから、注意が必要です。比較するものの選定で結果というのは、大きく変わってきます。結果が変わってくることもあるのです。なので、業者さんの倫理観というのは、特に大切だと感じています。

話を戻しますと、収益改善というのは、色々な手法の組み合わせで提案されます。物件の価値を高めて賃料を上げる、空室や賃料の未回収損を減らす、運営費を減らす、ローンの支払い額を減らすなどを複数組み合わせて提案されます。これは、そんなに簡単なことではありません。ちなみに、当社はその収益改善を提案できる物件しか管理をしておりません。

以上のように家主さんの代わりに管理業務を行う管理会社さんは、多数ありますが、収益改善を提案する管理会社はそう多くはありません。もし、空室で本当に困っている、あるいは、これからが不安で仕方がないという場合は、収益改善を提案してくれるかどうかがポイントになると思います。

B 『賃貸仲介中心の管理会社さん』VS『賃貸管理主体の管理会社さん』

賃貸管理会社といっても、多くの種類があることを皆さんはご存知でしょうか?税理士さんに得意分野があるように、また、お医者さんに専門があるように賃貸管理会社にも得意分野があります。

特に賃貸仲介がスタートで管理をその後にやっている会社、賃貸管理から始めて、賃貸仲介も一業務として行っている会社、管理専業の会社などありますね。管理専業の会社さんは管理専業と謳っていますが、それ以外は特にそのようには謳っていないことが多いです。これも家主さんの目的によっても会社の選択が変わってくると思いますが、一つ言えるのは、『当社は家主さんのことを第一に考えた管理会社です!』と言い切ってくれるところの方が、家主さんの資産を任せるには良いのではないか?というのが私の意見です。

では、どのような違いがあるのかを見てみましょう。例えば、空室が出たときのことを考えてみます。

賃貸仲介中心の管理会社は、『仲介手数料が稼げる!』と考えるでしょう。仲介店舗の経営上は、1件部屋を決めるという考え方は非常に大事です。仲介スタッフの人件費、家賃などの店舗維持費などがかかってきますので、日銭を稼ぐことは非常に重要です。なので、管理物件、専任物件に空室が全くないと、商売あがったりになってしまいますから、ある程度の空室=退去は必要になってきます。

一方、賃貸管理主体の管理会社さんは、管理手数料が主体ですので、空室時の管理手数料は入ってきません。ですから、出来るだけ空室は少なくしたいのです。

借りている方の退去を防ぐための考え方(テナントリテンション)を取り入れている会社さんが賃貸管理主体の管理会社さんに多いのはこのためです。退去者さんにアンケートを取って、それを家主さんに伝えて退去を減らす動きを取るのもこのテナントリテンションの考えがもとになっています。

 

もう一つ考えてみましょう。賃貸仲介主体の管理会社さんは「しばらくは自社か自社のグループ会社だけで募集しよう」と考えます。ほんとこれ、多いんです。百歩譲って、店長クラスが、それではダメということで、他業者に早く流す動きを取るとすると、「自社で決める気がないんか!」という精神論みたいな訳の分からん話になります。これって、家主さん目線ではなく、自社目線ですよね。こんなことがいーっぱいあります。そりゃ、仲介手数料は自社で決めたほうが儲かりますもんね。

一定期間決まらなかった場合に初めて他業者に空室情報を流すということもあります。このパターンで空室情報を流していて、物件が他業者に流れたことには、入居のピークが既に過ぎているなんてこともざらです。多分、家主さんはあまりご存知ないとは思いますが。管理主体の管理会社さんは、退去が出たらすぐに近隣の全業者さんに一律に情報を流そうとします。早く部屋を決めることが行動の指針になりますから、やることもはっきりしています。

また、賃貸仲介中心の管理会社は空室が出たら、先ずはとりあえず募集しようとします。それに対して、賃貸管理中心の管理会社はどうすれば物件の価値を高めて早く埋められるかを第一に考えます。中には、退去の際に合わせて設備を付加して、競争力を落とさないように提案することもあります。家具付きの提案や、条件設定でのフリーレント検討などもその中に入ってきます。中には、前回の退去から値段を下げて募集することがあるかもしれません。その時の判断基準が賃貸管理主体の管理会社は、空室を早く埋めることであり、収益の減少を最小限に食い止めることなのです。

これを、管理会社の収益性という観点から見てみます。賃貸仲介中心の管理会社は仲介手数料が入ってほしいので、空室は一定数必要です。それに対して、賃貸管理中心の管理会社が第一に考えている売り上げは、家主さんからもらう管理手数料です。空室が発生したり、家賃が下がったりすることは、管理料を減らすことに直結します。なので、自社が儲けるためには、家主さんに儲かっていただくことが一番有効なのです。

皆さんならどの業者さんを選びますか?