どのパターンならリノベOKか?
賃貸アパートやマンションは、築年数が経過すると、市場競争力が低下してきます。まだ低下していない段階では、維持管理。原状回復・設備機器の交換・模様替えなどのリフォームで通常は十分に対応可能です。しかし、市場競争力が低下してくると、通常リノベーション・建替え・売却による資産の組替の3つが手段として検討されます。
上の図が一番上手にリフォームとリノベーションの違いを表しているものだと思っています。新築時は当時一番レベルの高い物件を建設します。年数が経過するごとに劣化が起こってくるのはモノですから当然ですよね。で、退去した後にリフォームを掛けてキレイにします。それでも、年数は経過しているので、新築当初までは戻りません。次の入居者さんが入ると、さらに劣化が起こります。同様のことが数回繰り返されると、市場競争力が低下してくるわけです。で、その時に、新築当初のレベルまでリフォームしたとしても入居者の希望水準は上昇しているので、この溝は埋まりません。そこで、リノベーションをすることになります。これにより、市場競争力を確保するのです。
しかし、賃貸住宅において、リノベーションをして良いケースは以下の全ての要件を満たした場合のみだと私は思っています。
- 家主さんの目的と目標に照らし合わせて、リノベーションをしても良い環境にある
- 市場競争力が低下していて、リノベーション以外に方法がない
- リノベーション投資をすることで、家主さんの期待利回りを達成することが出来る=収益改善の効果がある
そもそも、空室対策は、空室を埋めるためにするんじゃありません。家主さんの目的を達成するために行います。ご自身が何のためにアパートを経営されているのか?しっかり向き合う必要がありますね。それが出来たら、その目標・目的を鑑みて、リノベも選択肢の一つかどうかを見極めます。手元にお金を置いておきたい、あるいは、銀行の融資枠を使いたくないなどの理由がある場合は、別の方法を検討すべきでしょう。
次に、アパート・マンションのある立地がどのようなところなのかを考えます。特に駅の近くなどで、立地が素晴らしい物件は、どれだけ家賃がアップできるのかなどの検討に入ります。そこまででもなく、中途半端な立地であれば、リノベをすることで市場競争力が回復できるのか?を考えます。よく、家主さんはここで家賃保証付きのリノベーションプランを検討されたりしますが、新築アパート・マンションの家賃保証同様、家賃保証が無くなったときに賃貸経営として成立するのかを検討される必要があるでしょう。立地の悪いところであれば、リノベかけたからと言って、賃貸経営が成り立つとは限りません。極力慎重にする必要があると私は考えます。あとは、事業年月や投資回収指標などを検討します。おおむね、5年以内(3年以内だと良いですね)に回収できるようであればOKでしょう。
以上のように、リノベして良いパターンというのは、極めて限定的に解釈しています。新たな価値を創出するものとして注目されていますが、リノベ提案ありきでは、『モノ』が主体の提案になってしまいます。あくまでも『ヒト』のために賃貸アパート・マンションがあるので、順番が逆になってはいけないと思っています。ですので、部屋が決まらなかったらなんでもリノベの今の風潮には、疑問を持っているというのが正直なところです。