家主さんの所有されている物件(モノ)をどうするのか?という視点で空室を考えたときに効果があるのは、マーケティング手法を活用することです。そうすることで、その物件に興味をもってもらい、入居してもらうことが出来るからです。満室稼働するための戦略と方法であるとも言えますね。私たちが空室改善をする時には、不動産管理のマーケティング4つのPを常に頭の中において考えています。

A プロダクト(Product)…(商品の)質・場所・設備・間取り・築年数・評判

まずは物件自体といったところでしょうか。物件自体には、何とかできることと出来ないことが混在します。

築年数とか、場所っていうのは、何ともしようがありませんよね。それに対して、設備や間取りなどは、お金さえかければ何とかなるものになります。新築の時は、その当時はハイレベルの設備を有していたのでしょうが、年数の経過とともに老朽化し、また、入居者の望む賃貸レベルも高くなり、ニーズに合わなくなってきます。これを陳腐化と呼びます。

エアコンやキッチン設備でよくありがちなのが、「使えないこともないからそのままで」となると、この差は埋まってきません。なので、家賃をさげてバランスを取るということも併せて検討しないといけなくなります。また、昔はなくて当たり前なのが、今はあって当たり前になっているといったものもあります。宅配ボックス、Wi-fi無料設備などは最たるものではないでしょうか。これらを費用対効果を考えて退去メンテナンス時にいかに効率的に付加・交換していくかがポイントになります。

また、費用がそんなにかからないものとして、「日常清掃」があります。これは、空室対策上は非常に大切です。日常清掃がしっかりと行われていれば、物件の外回りやエントランス、通路、廊下がいつも綺麗に清掃され整頓されているので、空室を内覧に来た際にも印象は良いですし、入居者が長く住んでくれることにもつながります。

あまり費用をかけすぎては、運営費がかかり収益を圧迫してしまいますが、清掃をしないでゴミやホコリがそのままの状態で放置されていると住んでいる入居者さんにもイメージが良くありません。また、空室を内覧された方にも決して良いイメージを与えません。ですから、その物件をキレイな状態に保つことも重要な空室対策の1つと言えるのです。

B プライス(Price)…家賃・敷金・募集条件など

家賃と初期条件のことです。どんな物件でも、極限まで家賃を下げたら決まります。しかし、毎回毎回そんなことをしていたのでは、家主さんもたまったものではありません。

例えば、築20年のアパートがあって、5年やそこらで建替をするのであれば、リフォーム工事をするのは勿体ないですね。その場合は、家賃を下げてでも決めた方がよいかもしれません。また、同様の物件のタイプで新築供給がめいっぱい行われていて、リノベーションを掛けてもその家賃層には勝負できないという場合があります。その場合も家賃を下げて別の客層を狙うというのも一つの方法かもしれませんね。このような場合は家賃値下げもやむなしとなりますが、何でもかんでも家賃を下げるというのはおススメできません。それは以下の理由からです。

  1. 資産価値の減少
    賃貸物件の価格は、NOI(ネットオペレーティングインカム=営業純利益)で決まります。他の不動産価格を計算する時のように、土地がいくらで建物がいくら(原価法)という計算の仕方ではありません。いくら稼いでいるかできまるのです。このNOI(いくら稼いでいるか)を近隣の適正な利回り(キャップレート)で割り戻して実際の価値を算出します。これを収益還元法の直接還元(DC法)といいます。もし、年間のNOIが100万円下がってしまったとしたら、キャップレートが10%だとすると、100万円÷10%=1000万円もの資産価値を下げることになるのです。これだけ資産価値が下がるという重みを感じていただければと思います。
  2. 負のスパイラル(循環)
    家賃を下げ続けていると、金払いの悪い入居者さんやクレーマー、トラブル多発な借主さんなどが増える傾向にあります。そうすると、トラブル多発な借主さんが部屋を借りるというデメリットだけでなく、優良な入居者さんも退去してしまうことになります。また、その都度家賃を下げていると、数年前に契約した入居者さんは、インターネットの募集賃料を見て、こんなに下がっている!と思って値段交渉をしてくるかもしれません。1回や2回は突っぱねることができても、その内出ていってしまうかもしれませんね。

いかがでしょうか。空室対策は何のためにするのでしょうか?それは、空室をなくすためではなく、賃貸経営の収益を増やすためなのです。目的を見誤ると、あとで取り返しのつかないことになってしまいます。あるコンサルティング家主さんは、家賃を下げて、AD(広告料)を上げて部屋を埋めて、○○室空室を改善しました!なんて言ってます。何の意味もないことは言うまでもありませんね。あとは、礼金などの初期費用で調整すると、資産価値まで下げないですむことがありますので、合わせて検討してみてくださいね。

C プロモーション(Promotion)…宣伝広告・PR活動

仲介業者さんの物件の見せ方も大切なポイントです。競合する物件が少なかったり、タイミングが良かったりした場合はすぐ決まるかもしれません。しかし、ライバルがいっぱいの場合はお客様に選んでもらう仕掛けが大切なのです。

先ずは、ポータルサイトなど(HOME’s、SUUMO、at homeなど)に掲載されている写真の枚数と質をチェックしてください。最低でも20枚以上、暗い写真は論外です。あと、トイレの蓋が開いているなんてのも同様ですね。

今は仲介店舗に行くまでに入念に下調べをしてから行くのが当たり前になっています。その時に如何に新鮮な情報を提供できるかが勝負となります。ちなみに、自主管理家主さんの物件は、以前の物件の状態や、次の改装度合いがわからなかったりするので、原則退去して、メンテナンスの後に写真を撮影して募集をすることになるのが大半です。この時点で大分遅れを取っていることが多いです。

案内用の図面(マイソク)の出来もプロモーションのポイントとなります。分譲マンションのパンフレットとまではいかなくても、部屋の住み方をイメージできるようなマイソクだとなお良いですね。あとは、室内をキレイな状態に保つということも必要です。汚れが残っていたり、臭いが残っていたりするのは、残念ながら論外です。

最近では、ホームステージングなども有効ですね。

D プレイス(Place)…場所・近隣・地域

最後にプレイス、立地とか場所と訳します。やはり、賃貸需要があるかないかというのは、物件を考える時に重要になりますよね。駅からの距離だけではなく、学校からの距離や職場までの距離も検討する必要があります。それによって需要の有無を判断することになります。

そこをしっかりと見ることで、どのような入居者さんに入ってもらったらよいのか?理想とする入居者像はどんな方なのかと想像することが可能になっていきます。同時に、その需要が無くなる可能性(学校移転、工場閉鎖など)も併せて想定しておかなければなりませんね。駅からかなり離れていたとしても、交通手段が車ONLYのエリアであれば、ガレージ付きであれば収益性があるかもとみることが出来るかもしれませんね。