まさか、原状回復=入居前の状態に戻すことだと思ったりしていませんよね?
こんばんは。
今日は『原状回復』について書きますね。
何をいまさら…と言われるかもしれませんが、先日お会いした一般媒介(仲介を1社ではなくて広く窓口を設けて募集)の大家さんがご存知なかったので、ちょっと書いてみようと思います。
1.原状回復って何?
おの 『こんにちは~。今回は電話いただいてありがとうございます!』
大家A 『お~、来たか~、待ってたよ!』
おの 『いや~人から待たれるのってうれしいですね。』
大家A 『いやな、今日は聞きたいことがあって来てもらってん。』
おの 『はい。一体、どんな御用でしょうか??』
大家A 『実は、この前退去があってな、お客さんと揉めてん。』
おの 『あれ、そうですか。珍しいですね。今はほとんど揉めることなんてないやないですか。』
大家A 『いや、ワシもな、昔みたいに敷金全部引いたりとか、そんなあくどいことはやってへんねん。』
おの 『そうなんですね~。では、そんなに揉めることはないんじゃないですか?』
大家A 『それがな、ハウスクリーニング代も引かんと全額返せって言って来よってん。』
おの 『そうなんですね。ちなみに、契約書って今お持ちでしょうか?』
大家A 『これやがな。しっかりこうやって書いてあるやろ?』
第〇〇条 貸主は、賃貸借契約が終了し、物件の明け渡し時に賃料の滞納、原状回復費用の未払い等賃貸借契約から生じた債務が借主にある場合には、債務を敷金から差し引き返還するものとする。
大家A 『な?書いてあるやろ?』
おの 『確かに書いてありますね~。原状回復をしろって。でも、これでは、当然ハウスクリーニングを請求できることにはなりませんよ~。』
大家A 『・・・ん?何でやねん!』
このような会話でした。
さあ、皆さんはどのようにお考えになられますか?
言葉自体をとらえると、原状回復というのは、『元の状態に戻す』という意味があります。
しかし、その原状回復義務の内容は、賃貸物を借りた当時の状態に戻すのではなく、賃借人の故意や過失、善管注意義務違反(善良なる管理者として注意する義務違反)、通常使用分を超える使用による損耗や毀損を復旧することとなっています。
自然的な劣化や損耗、通常の使用により生じる損耗や汚損は賃貸人が負担すべきものと考えられています。
ですので、通常に使用していたら、修繕義務は発生しないことになります。
賃借人には原状回復義務がないことになります。
ここまでが原則の話ですね。
しかし、物事には『原則』と『例外』があります。
2.原状回復特約と消費者契約法
例外の話をしますね。
契約自由の原則というのがあります。
契約上、貸主と借主との間で明確に合意がされていれば、法律に定められている内容と違うことを定めることができます。
つまり当事者間での特約を付けることができるということになりますね。
このあたりのお話があるので、
・ハウスクリーニング特約
・畳表替特約
・小修繕特約(電球とか)
があったわけです。
理論上、貸主負担のものを合意の上で借主負担としていたわけです。
ちなみに、特約の有効性については、
①特約につき双方の合意があるか?
②特約を設定するのに合理的か?(他の物件と比較してべらぼうに家賃が安いなど)
③契約時にきちんと説明されていたか?
などにより判断されます。
で、ハウスクリーニング特約も場合によっては有効となったわけです。
平成13年4月1日の消費者契約法施行以前はね!
消費者契約法第10条には、消費者に一方的な条項は無効ということが書いてあります。
とすると、せっかく特約で書いたものが、無効になることもあったりします。
なので、特約を入れていたとしても100%安全ではないということは貸主としても認識しておく必要があるんですね。
今回の大家Aさんの場合は、それ以前の問題で、特約すらもなかったわけです。
そうすると、当たり前だと思っていたハウスクリーニング代が引けず、苦労するということになるわけです。
一般媒介ということは、賃貸借契約書は基本的に客付け業者さんのものを使用します。
すると、特約をしっかり入れていないなどの問題が退去時(4年してからとか)に発覚することがあるんですね~。
いかがでしたでしょうか?
一般媒介でのリスクは契約上の不具合と、情報難民にあると私は考えます。
一般媒介で募集がかけられる大家さんというのは、常に電話を受けられる状態にし、かつ、仲介業者さんとのやり取りもパーフェクトにこなさねばなりません。
プロ大家さんはさておき、この後売却を考えている大家さんや初心者大家さんには結構大変な形だと思います。
管理会社さんの選定と合わせて、しっかり考えておいてほしいポイントです。
今日はここまでです。
本日もお読みいただきありがとうございました。